以下の文は,私が,10年前に所属したウインブルドンスカッシュアンドバドミントンクラブについて,東海体育学会の会報で紹介したものです。ちょっと古い文ですが,クラブの運営方法等は変わっていないはずです。英国のバドミントンクラブについて理解してください。

ウインブルドンスカッシュアンドバドミントンクラブのホームページへ

  英国のバドミントンを語るにはいわゆる町のバドミントンクラブを抜きにすることはできない。英国ではチャンピオンシップスポーツとしてのバドミントンが学校や職場で行われることはほとんど無いので、ジュニアであろうがシニアであろうが強くなりたいと思うものは町のクラブに所属することになる。試合に勝っことが目的でなくても、本格的にバドミントンを楽しもうとする者にとってはこのクラブがその中心となる。以下に私がJOC在外研修員として英国滞在中,1年間に渡り所属したウインブルドンスカッシュアンドバドミントンクラブについて紹介する。
 このクラブはロンドン南部に位置し、全英テニス選手権で有名なウインブルドンローンテニスアンドクロッケークラブから徒歩15分のところにある。設立は1937年と古く、英国でも最も有名なバドミントンクラブの一つである。ただし、施設は設立当時のバドミントンホールがいまだに使われているくらいなのでお世辞にも近代的とは言えないが、歴史的で落ち着ける雰囲気がある。7面のバドミントンコートと4面のスカッシュコートが用意されている。会員は約1,000名で、下は5歳のチビッ子選手から、上は80歳のシニアプレヤーまで、人種も白人、黒人、黄色人といろいろで、国籍もヨーロッパ、アフリカ、アジア、アメリカ諸国とまさに人種のるつぼである。競技レベルの方も初心者から世界のトップで活躍している者までバラエティーにとんでいる。
 クラブへの入会方法は極めて簡単で申込用紙に必要事項を記入し、会員の一人に推薦の署名をしてもらい提出するだけである。入会金は約4,000円、年会費はバドミントンとスカッシュの両方の施設が使えるフルメンバーシップで年約25,000円、バドミントンのみだと約20,000円である。ジュニア割引や家族割引などもあり、我々日本人の感覚からすると大変値打ちではないかと思われる。他にソーシャル会員というメンバーシップもあり、クラブのラウンジとバーのみが使え、年会費は約5,500円也。クラブのオープン時間は平日は10:00〜23:30、休日は9:00〜23:00で、クリスマス以外は無休、コートさえ予約していればいっでもプレーを楽しむことができる。
 クラブでプレーをする方法にはいくつかあるが、最も一般的なのは個人的にコートを予約してプレーする方法である。コート使用料は1コート1時間約1,000円也。入会したての頃は知り合いも少ないので練習相手を探すのが大変であるが,同じくらいの実力の相手に積極的に試合の申し込みをしている打ちに,反対に挑戦状をもらったりして練習相手が増えていくことになる。もう一つのプレーの方法はセッションでのプレーである。セッションとは半年で10000円程度の参加料を払い、毎週1回決められた曜日、時間に同程度の実力の者が集まりダブルスのゲームを行う会のことで、このクラブでは6ランクのセッションが用意されている。セッションでプレーするためにはプレーインセッションと称する実技テストを受けなければならない。ここでは10人の審査員の前でダブルスのゲームを行い、技能、マナー、社交性をもとにどのセッションでプレーすべきかが決められる。その他にオープンセッションと呼ばれる集まりがあり、レベルに関係なく気の合う者がグループを作り、プライベートにメンバーを集めて毎週決まったときにプレーを楽しんでいる。7〜8人のグループもあれば30人以上のグループもある。いくつかのグループをかけ持ちしている人も多い。
 クラブではアフターバドミントンでの一杯がこれまた楽しく、プレーが終わるとシャワーをあび、対戦相手とバーで乾いた喉を潤すというのが常である。勝者が敗者に一杯おごるというのが昔からのしきたりらしい。その時には対戦相手に大声で注文を聞かないというのがマナーだそうだ。なぜならば,どちらが勝ったかがいっペんにみんなに知れわたることになるからだ。バーではプレーを肴に大いにコミュニケーションを深めることになる。プレーしている時間よりこちらの時間の方が長くなることも少なくない。ここでは気の合う仲間といかに楽しいときを過ごすかということが最優先されるのである。コミュニケーションを深めるといえばソーシャルコミッティーがダンスパーティーやカレーパーティー、ハンディキャップトーナメント等いろいろなことを企画したりする。シーズンに入ると各セッションごとに州のクラブリーグのいろいろなディビジョンに参如し、クラブ外の人達とのコミュニケーションの輪を拡げたりもする。
 黄昏の国と呼ばれる英国の、あるバドミントンクラブのメンバーに、カネと気をたいして使わずに人生を楽しむ方法を、1年がかりでしっかりと教えられた。


ウインブルドンクラブの仲間と 帰国するときにクラブの仲間がさよならパーティーを開いてくれました。私の隣にいるのが,今は亡き,ドロシー・ヒンチクリフ女史です。サリー州の副会長で,若いときには,あのベティー・ユーバーとダブルスを組んだこともあるそうです。自宅へ招待してくれたり,全英選手権の時には彼女の紹介で,組み合わせ会議にも出席させてもらいました。その後文通を続けていましたが,一昨年,息子さんより訃報が届きました。                 

このページのトップへ

バドミントンあれこれへ

トップページへ