| スマッシュと短パンのボタン |
20年程前,私が東海女子大学バドミントン部の指導をしていたときのことである。
ある時,尾張名古屋は露橋スポーツセンターというところで,東海地区の大学リーグ戦が行われた。大学リーグというのは2複3単の団体戦で行われるのであるが,ある選手が勝負のかかったシングルスに出場した。
勝負がかかったといっても,相手は格下の選手で,そう慌てることもなく1ゲーム目を先取した。2ゲーム目も順当に点数を重ね,もう少しでゲームセットというところまで試合は進んだ。
ところがここでアクシデントが起こった。といっても,怪我をしたわけではない。
彼女が後方に下がりながらスマッシュを打ったときのことである。渾身の力を振り絞りハードヒットし,前方へ跳びだしていこうとしたときのことである。彼女が,あっと叫んで,一瞬立ち止まったのである。しかし,ラリーは続いている。動きを止めるわけにはいかない。もちろん彼女はシャトルを追い続けた。しかし,動き方がおかしい。足の運び方もおかしい。なぜかお腹をへこませながら,身体をくの字に曲げるようにして動いている。
私は腹筋でも痛めたのかなと思った。しかし,次の瞬間にそこで起こった出来事を理解した。
そのラリーが終わった瞬間のことである。もちろん身体をくの字に曲げたような状態でまともな動きはできないのでそのラリーは落としたが,そのラリーが終わった瞬間のことである。彼女が脱兎のごとくベンチに戻ってきた。そして,事の真相をチームメイトに告げた。
彼女の話によると,なんと,ラリー中,スマッシュを打った瞬間に短パンのボタンがとんでファスナーが開き始めたというのである。早速救急処置ということで,チームメイトが安全ピンを持ち出し,短パンのボタンの部分を留めてファスナーを整えた(ボタンを付け替える時間がないので)。一方,他のチームメイトはといったら,とんでいったボタンを探してベンチに持ち帰った。
そのとき,その体育館には男子選手の姿も多くみられた。そして,この試合のことを観戦しているものも多かった。そこで,このコートの状況が観覧席にも伝わり,あちこちで笑い声や冷やかしの声が起こった。
その後の試合に話を戻そう。彼女はそのときには,まだもって,うら若き乙女であった。これが恥ずかしくないわけがない(中年のおばちゃんだったら,こんな事を「へ」とも思わないだろうが。みたけりゃ,みろい,とでもいうのじゃなかろうか)。
おっと,失言,わたくしとしたことが品のないことを↑( )中。m(_ _)m
試合再開後も彼女の動きはぎこちなく,顔は青ざめ,大量リードの得点差も,あっという間にひっくり返されて逆転負け。1対1のゲームオールとなった。
で,さすがは女子学生チーム,5分間の休憩の間にチームメイトが更衣室でボタンを取り付け短パンは元どおり。回りのみんなが彼女を励まし,3ゲーム目開始。何とか接戦をものにし。相手に金星を与えずに済んだという次第。皆さんご苦労様でした。
しかし,こんな時の女性の団結力にはびっくりさせられます。家人の妊娠出産の際の女性の団結力にも驚かされましたが。男性が入っていけない雰囲気がありました。どちらの場合にもです。すなわち,ボタンがとんだときも,出産の時にもです。
さて,短パンについての解説だが,今は,ぶかぶかの短パンが流行っている。が,昔は,そのときは,ぴちぴちの短パンが流行っていた。メーカーは短パンの素材について,伸縮性とかフィット感だとかを競っていたように思う。だから,こんな事,つまり,ボタンがとぶようなことが起きたのである。
彼女については,その試合の少し前の頃から,私は,その選手の体型について,最近太ってきたなー,と感じていた。急に太ると怪我をする場合があるので気をつけなければと思っていた。
ボタンがとんだくらいで済んでよかったと,そのときは本当に思ったものでした。
そのボタンをとばした彼女,今でもバドミントンをやっています。といっても,自分がというよりは小学校5年生の娘さんと,小学校3年生の息子さんに教えていますが。2人のお子さん,本当にがんばって練習をしています。お母さんのスパルタ指導に耐えています。私も週に2度ほど,2人のお子さんに特訓をする姿を遠くから拝見いたしておりますが。
どうぞがんばって下さい。ご活躍を期待いたしております。
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