ウエンブレー |
日本のバドミントン界では、標記のウエンブレーという語には特別な意味があるようです。
バドミントンのプロショップにも標記の名前を使っているお店もあるくらいですから。
しかし、英国では、ウエンブレーといえば、サッカーの聖地で、ウエンブレー=サッカーという図式になるのです。
ウエンブレーとは、ロンドンの中心街から北西20km位のところに位置する地名で、その地にウエンブレー・スタジアムというサッカー場があるのです。
このウエンブレー・スタジアムは1923年に造られたもので、当時、大英帝国の盟主であった英国王室が帝国の威信をかけて作り上げたものなのです。ですから、1948年、第2次世界大戦後、初めて開催されたオリンピックのロンドン大会でもメイン競技場として使用されています。
他方、英国にはFAカップといって、英国のサッカークラブチームNO.1を決める選手権大会があります。この大会はものすごく歴史と伝統と権威がある大会ですが、このスタジアムが建設されてから今日にいたるまで、その決勝戦はこの地で行われています。
日本のサッカー界にも天皇杯がありますが、これなどもFAカップを真似して創設されたものだそうです.
サッカー選手ならば、ここでプレーをすることは大変名誉なことで、憧れなのだそうです。
国際サッカー連盟の理事で、日本サッカー協会の副会長である小倉純二氏も、その著書「サッカーの国際政治学」の中で、日本代表チームをこの地でイングランド代表と戦わせるのが長年の夢で,1995年にその夢がかなったときは,思わず目頭が熱くなったと述べられています。
まさに、聖地なのです。
さて、冒頭で、日本のバドミントン界では、ウエンブレーという語には特別な意味がある、と述べましたが、これには理由があります。
今でこそ、バドミントンの世界1を決める大会といえば、オリンピックあるいは世界選手権ということになりますが、ちょっと前まではそのような大会がありませんでした。
世界選手権の個人戦が始まったのは1977年からのことで、オリンピックに至っては1992年のバルセロナオリンピックからでした。
したがって、つい最近までは、最も歴史があり、権威がある大会とされていた全英選手権が世界1を決める大会と認識されていました。
さて、この全英選手権ですが、1899年にロンドンのバッキンガムゲートにあった、ロンドン・スコッティシュドリルホールというところで第一回大会が開かれました。
その後、開催地を転々と変えましたが、1957年〜1993年の間は、前出の地、ウエンブレーに設置されているウエンブレーアリーナで腰を落ち着けて開催されました。
そこで、憧れの全英選手権が開催されている地ということで、日本のバドミントン界ではウエンブレーという語に特別な思いが込められたのではないかと想像されます。
ただし、このウエンブレーアリーナですが、もともとは、ロンドンオリンピックの水泳競技のために建設されたプールなのです。
ですから、名称もはじめは帝国プールあるいはウエンブレープールと呼ばれていました。
それが、プールから体育館に改築されたのに伴ってウエンブレーアリーナと呼ばれるようになったのです。
私も、10数年前になりますが、このアリーナを訪れ、全英選手権を観戦したことがあります。
そのときは、たまたま、日本オリンピック委員会からの派遣ということで、英国協会には特別のご配慮をいただきました。
そして、会場内のすべてのエリアに入ることができる特別許可証を発行してもらいました。
したがって、コートサイドをはじめとして、記者会見場、選手の更衣室、役員室、医務室等色々なところに出没することができました。
とてもよい経験をしたと思っております。
さて、このウエンブレーアリーナですが、私が訪れたときも老朽化が激しく、お世辞にもよい体育館だとはいえませんでした。
そこで、1994年からは現在に至るまで、バーミンガムにあるナショナルインドアアリーナで全英選手権は行われるようになりました。
ともあれ、サッカーの聖地ウエンブレーですが、少なくとも日本のバドミントン界では、ウエンブレーといえばバドミントンだと思っている方も少なからずいると思われます。
これもまた、興味深いことだと、英国人は考えるのではないでしょうか。
ということで、本日は失礼致します。
と以上のように書きましたが、ロンドン在住のHiroyama様から、掲示板のほうへ以下の情報が寄せられましたので、ご訂正をお願いいたします。
「このスタジアムが建設されてから今日にいたるまで、その決勝戦はこの地で行われています。」と紹介されていますが、2001年から今年2005年まではスタジアムが改築工事中のため、決勝はウェールズのカーディフのミレニアムスタジアムで行われました。来年2006年はウエンブレーに戻ると
発表されていますが工事が間に合わないという話もあります。