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バドミントンのシャトルについて

 以下の文は,蘭和真が東京法令出版発行,「話題源体育」p447,に執筆したものです。ご参考にしてください。ただし,引用される場合は出典を明らかにしておいてください。

 ちまたでは羽根と呼ばれている。バドミントンのシャトルのことである。正確に呼ぶならはシャトルコックである。シャトルには行ったり来たりするという意味がある。宇宙飛行船のスペースシャトルもここからきている。コックには雄鶏という意味がある。もともと鶏の羽根が使われていたからである。バードという呼び名もある。飛び交う姿が小鳥に似ているからである。素材は文字どおり鳥の羽根である。もちろん天然のものである。現在ではガチョウとアヒルの羽が主に使われている。ガチョウの羽根の方が丈夫でよい素材であるといわれている。もっとも最近ではナイロン製の合成球も出回っている。昔といっても40年ぐらい前までは鶏の羽根が主に使われていた。陸鳥球と呼ばれるものである。鶏の羽根はガチョウやアヒルと違って,羽根の反り方と曲がり方が大きいため,かなりシュートするうえに遠くへ飛ばないという欠点があった。
 シャトルの羽根の枚数は16枚である。1988年のルール改正でそう決められた。それまでは14〜16枚の幅が認められていた。さて,1個の試合球を作るのに何羽のガチョウが必要であろうか。試合球に使われる両羽根と呼ばれる形の良い羽根は1羽のガチョウから14枚しか採れない。しかも,右羽根が7枚で左羽根が7枚である。右と左では羽根の曲がり方が若干違うので,混ぜて使うことはできない。3羽集めないと1個のシャトルもできないが,3羽集めると2個は作れるという計算になる。最高級品を作る場合には上から3番目にある最も丈夫で形のよい3番羽根を16羽のガチョウから集める。冬を目前にした鳥の羽根はしっかりしているので,9〜10月の間に採られるものが最もよいといわれている。
 球技スポーツには使われるボールの弾み方に関して規定がある。テニスや卓球では,一定の高さから落とした時のバウンドの高さが規定されている。シャトルにも当然あるのだが,ちょっと面白い。バックバウンダリーラインの上に打点がくるようにして,アンダーハンドで全力のストロークを打ち,向かい側のバックバウンダリーラインの手前53〜99cmまでの範囲に落ちたものが合格であるという規定である。シャトルは非常にデリケートなものなので,環境によって飛び方が著しく変わるため,このようなおおざっぱな規定にとどめられているのである。事実,同じシャトルでも気温が高いとよく飛ぶし,低いと飛ばない。気圧の低い所ではスピードアップする。シャトルメーカーでは気温に応じて使えるように,数種の飛び方の違うシャトルを用意している。
 
 トピックス 
 現在市販されている選手用のラケットは90g前後の重量のものが主流である。単1の乾電池が100gなので,乾電池よりも軽いのである。ちなみにテニスのラケットは320g前後である。ラケットの軽量化はここ10数年の間に急激に進んだ。軽くて丈夫を合言葉に,素材もずいぶん変化した。昭和25年ごろはフレームもシャフトも木製のオールウッドラケットで,150gぐらいの重量があった。昭和30年代になるとスチールシャフトのものが開発され,120gと軽くなった。50年代になるとオールスチールのものが現れ,その後,素材にカーボンが使われるようになると100gを切るようになった。今でこそ用具に関しては何の不自由もなくなったが,昔の日本の選手は大変であった。陸上棒高跳びでは,1952年のヘルシンキオリッピックで澤田文吉選手が,開発が遅れていた日本では手に入らないということで,竹の棒を持って乗り込んでいったものの,現地でライバルたちがスチール他の棒を使っているのを見るやいなや,それを購入し入賞したというエピソードがある。バドミントンでも1955年のトマス杯の時にはオールウッドのラケットをもって香港に遠征したところ,見たこともないスチールシャフトのラケットを相手が使っていたので,すぐに買って試合をしたという時代もあったのである。

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