あららぎクラブ ジュニア大会初参戦 そのU |
さて、ジュニア大会に小学3年生の娘を出場させてみて、長いスパンのなかで、このくらいの子どもに対しては、今後どのように育てていけばよいかということについて、少しだけ考えてみました。
まずは、トップパフォーマンスをどの時期に求めていくかということですが、女子バドミントン選手の場合は、子どもの発育・発達を考えて、また、テニスやゴルフの場合も参考にすると、目標として、16歳〜18歳頃にブレークさせるように持っていったらよいのではないかと考えています。
つまり、それまではまったく無名であったとしても、すい星のごとく現れ、頂点を狙える位置に、その時期を目標に、登場させるということです。
そのためには、今の時期が非常に重要な意味を持っていると思われます。
16歳〜18歳の時期にブレークさせるためには、その時期に必要となる、勝つための技術を、8歳〜11歳頃の間にすべてマスターさせなければならないと思っています。
そして、この時期ならば、すなわち8歳〜11歳位の子どもであれば、大人にとっては難しいと思われる技術でも、逆にあっさりとマスターしてくれると思っています。
すなわち、将来世界で戦おうとするときに必要な技術は、この時期ならば簡単に習得できるのではないかと思います。
むしろ、12歳以降では、時間をかけて教えても、習得するのはなかなか難しくなるのではないかと思います。
12歳以降には、スタミナやスピードをつけるためにたっぷりと時間を取らなければなりません。
また、一つひとつの基礎技術を磨き、それを実践で使いこなせるようトレーニングしなければなりません。
さらに年を重ねていけば、戦術や戦法など知力を磨くと同時に、パワーもアップさせなければなりません。
メンタル面も鍛え上げなければなりません。
時間はいくらあっても足りなくなるでしょう。
これに関して、すなわち長いスパンの指導を考える中で、今の時期、すなわち小学校3年生頃の時期に、試合とどのように関わらせていけばよいかと考えています。
子どもは試合にたくさん出たいと言います。そして、勝ちたいと言います。
これは当然の心理で、悪いことではないと思います。
試合で勝つということは、バドミントンを続けるための大きな動機付けになると思います。大切なことです。
しかしながら、気をつけていなければ、後で大変なことになると心配しています。
ひとつは、試合のやりすぎによる傷害の問題です。
試合は子どもの体に大きなストレスを与えます。
勝ちたいがために相当無理な打ち方をします。
それが積もり積もって、将来に影響してくるのではないかということです。
ふたつ目は、精神的な燃え尽きについてです。
試合は大人であっても相当なストレスをやプレッシャーを伴います。
子どもは、一見、なんともなさそうな感じですが、相当な精神的なストレスを受けていると思います。
将来、トップを目指していこうとするならば、いやというほどんの精神的ストレスを克服していかなければなりません。
そこで、せめてこの時期には過度なストレスは避けたいものです。
小学生でバドミントンをはじめても中学生になると他の種目に移る選手がたくさんいると聞きますが、その理由の一つにやりすぎということがあるのではないかと思います。
試合数が増えれば、当然練習量も増え、結果としてやりすぎになることが考えられます。
ということで、野球やテニスなどでは子どもの年間試合数について基準値を設けています。
例えば、国際テニス協会では、9〜10歳の子どもでは、練習試合を含めて、年間でシングルス10試合、ダブルス30試合を限度としています。
また、11〜12歳の子どもでは、練習試合を含めて、年間でシングルス50試合、ダブルス30試合を限度としています。
テニス界ですい星のごとく現れるスターたちも、子どもの頃にはあまり試合をしていないことが想像されます。
むしろ、小さなときにあまりやってないからこそ、ブレークしたときに、試合をやるのが楽しくて楽しくて仕方がないのではないかと思います。
一方、小学生がたくさんの試合に出ることに関して、もうひとつの弊害があると、私は思っています。
それは、試合で勝つための打ち方、試合で勝つための練習が重視されて、将来ブレークするときに必要な技術の練習がおろそかになってしまうのではないかということです。
バドミントンの基本は正確に狙ったところへ、ピンポイントで打つことだと思います。
しかも、同じフォームで色々なショットを打ち分けなければなりません。
例えば、クリアーかドロップかスマッシュか,相手に読まれないように打たなければなりません。
ストレートかクロスか、相手に読まれないように打たなければなりません。
これには当然高い技術が必要となります。
そして、色々なスピードのショットを打ち分けなければなりません。
速いフライトは極めて速く、遅いフライトはきわめて遅く、打たなければなりません。
これにも当然ながら高い技術力が必要となります。
さらに、相手とシャトルを同時に見ながらヒットしコントロールする技術も、当然のことながら必要です。
ドロップを打とうとしていても、相手の状況によっては瞬間的にクリアーに変更するといった技術です。
スマッシュを打つ場合にも打つ瞬間に、相手の構えを見て、コースを決めるといった技術です。
ディセプションの技術を磨くと同時に、アンティシペーションのセンスも磨かなければなりません。
ハイバックやブラッシュショット、ヘアピンにスピンをかける技術も必修です。
トラベリング(移動)の技術も重要です。
これも、ただ速くうごけばいいというものではなく、効率を考え、疲れないように移動する技術が必要です。
身に付けなければならない技術はここには書ききれないほど、山のようにあります。
しかしながら、このような将来必要になる技術は、小学生の大会で勝つためにはあまり役に立ちません。
それどころか、そんなことを意識してやっていたら、あっさりと負けてしまいます。
少なくとも、4〜5年生くらいの段階では、遠くへシャトルを打てる、あるいは速いシャトルが打てる子が絶対的に有利となります。
したがって、ディセプションもヘッタクレもなく、何も考えずに目いっぱいに大きくラケットを振れる子のほうが有利です。
トラベリングについても、怪我のことや、効率のことなど一切考えずに、ひたすらガンガン走り回る子の方が有利です。
だから、試合に勝たせることを第一に考えて指導をすると、そのようなプレーをする選手が自ずから生まれてくることになってしまいます。
しかしながら、遠くに打つことも、速く動くことも、効率的な方法さえ身に付けていれば、体が大きくなって、筋肉がついてくれば、自然にできるようになることだと思うのですが・・・。
この時期、例えば小学3年生の場合、1週間にこなせる練習時間は非常に限られています。
子どもに過度なストレスを与えずにこなせる量は、せいぜい1週間に3日、1回あたり2時間が限度ではないでしょうか。
しかも、1回あたり2時間の中には、ウォーミングアップとクーリングダウンの時間も含まれますので、せいぜい1回あたりに使える時間は90分が最大値でしょう。
基本をしっかり教えながら、試合にもしっかりと臨むためには、自ずから試合数が限られてきます。
しかし、繰り返しますが、試合に出る、そして勝つということも、動機付けのために大切なことです。
したがって、その量をどのように折り合いをつけるかが、指導者にとっては重要になってくるのではないかと、私は思っています。
近年、日本において、小学生の大会が盛んに行われるようになりました。
このように、地方レベル、全国レベル双方で大々的に大会を展開している国は、世界を見渡しても日本を置いて他にはないのではないかと思われます。
これはこれから日本のバドミントンが世界に向けて発展していくためには大きな武器になると思われます。
ただし、そのためには上述したようなことに指導者が注意を払いながらその武器を使っていく必要があるとは思います。
と、同時に、日本のジュニア指導者には大きな課題が突きつけられている気がしてなりません。
ともあれ、子どもたちの笑顔のために、日本のバドミントン界が発展していくことを心から願いながら、筆をおきます。
最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。
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