バックハンドストローク

 
 バドミントンの基本的な技術の一つにバックハンドストロークというものがある。右利きの人であったならば、主に自分の身体の左側に飛んできたシャトルを打ち返すときに使うストロークである。このときのバックハンドとは手の甲のことを意味し、したがって、手の甲をまず相手に向けてラケットを振り出す、と、ま、そんなようなストロークのことである。
 
 最近のジュニアの選手は何の苦もなく上手にこれが使える。さらに、ハイバックといって、頭よりも高い位置でバックハンドストロークを使ってシャトルをヒットする高等技術があるが、これなども朝飯前とばかりに使える選手も多い。で、ここで、最近のジュニアはといっているのは、最近じゃない、すなわち昔のジュニアにとってはこの技術を習得するのが難しかったということをいわんがためである。そう、ジュニアの時はこれが難しかった(私だけが思っているのかもしれないが)。特にハイバックなどを使えるジュニアはほとんどいなかったのではなかろうか。いや、むしろ、昔は、ジュニアはハイバックを使ってはいけないといわれていたほどである。しっかり回り込んでフォアハンドで打ちなさいと教えられていた。隠れて練習したりしているとしかられるということもあったんじゃなかろうか。なぜ、昔のジュニアにはこれが難しかったか、この答えは昔のラケットがとても重かったからである。今のラケットは90g位の重量だが、昔はそれが130gくらいあったのである。だから、力がないと振れなかったのである。
 
 さて、本題に入ろう。わたしは、大学3、4年生の時に、1学年下の後輩(仮にK君としておく)とダブルスのペアを組んでいた。このK君はサウスポーであったが、とてもバックハンドが下手であった。というよりは使えなかった。だから、本来バックハンドを使って打たなければならないようなところにきたシャトルに対してもフォアハンドストロークを使って打っていた。打ち方としては、ソフトテニスのボレーをイメージしてもらえばよかろう。


 ある試合のとき、K君がコートの右サイド、そして私が左サイドのサイドバイサイドフォーメーションをとっていた。そして、その状態でドライブ合戦となった。当然相手はK君のバックハンド狙う。K君がそれに対応するには、K君自身がコートの右側へ移動しなければならない。K君は1打ごとに少しずつ右側に移動してゆき、気がつけば片足がコートの外にでていた。相撲ならば寄り切りで負けである。しかし、それでも白熱したラリーは続いた。さらに相手が右側を狙ったとき、明らかにアウトとわかる球を打った。わたしは大声でアウトと叫んだ。K君はそれに反応し、身をよけた。それで、シャトルはコートの外遠くへ飛んでいく、はずであった。が、コツンという音がした。よく見るとシャトルはK君の頭に当たって、彼の足下に、落ちた。K君の両足が完全にコートの外にでていたのにも関わらずである。わたしは、バドミントンを30数年間やっているがこのような経験は、これ以前にも、これ以後にも、ない。


 その翌年、私とペアを組んだK君はインカレのダブルスで見事ベスト8に入賞した。この結果が、その後のK君の血のにじむような努力によるものなのか、あるいは、単にパートナーに恵まれただけのことなのかは、定かではない。

ね、常総学院高等学校バドミントン部監督の木内先生、また、昔話を肴に、一杯やりたいよネ。奥さんにもよろしく。


 努力に勝る天才はなし、これを今日の教訓としよう。

トップページへ