12月11(金) 1901年のバドミントンのルール

 以前,このサイトで1898年のバドミントンのルールについて紹介をしたことがある。したがって,今回の話題はその続編ということになる。

 以下は,当時のバドミントン協会の機関誌を中心に研究した結果、明らかになったことである。

 1901年4月12日に,The Badminton Association(バドミントン協会)の定期総会がロンドンにおいて開催された。
 総会は,協会会長でギルドフォードクラブ所属のバックレー氏が議長を務め,議事の進行を行った。15のクラブから代表が参加をし,残りの10のクラブからは委任状が提出された。
 
 この総会では,歴史的なルールの改正が行われた。それは,サウスシークラブ代表のシェークスピア陸軍少将(Major-General G. R. Shakespear)から提案された案を元に行われたものであった。

 さて、シェークスピア陸軍少将から出された提案の主な内容は以下のとおりであった。
 
 まずはコートの形状である。1898年のバドミントンのルールについて紹介した際にも示したが,当時のコートの形は真ん中がくびれた砂時計型であった。非常に煩わしいコートであったために,シェークスピア少将はそれを現行と同様の長方形にしようという提案したのであった。
 また,当時は,シングルスもダブルスも同じコートでやっていたのであるが,シングルス用のコートを新設しようと提案した。
 さらに,ポストの設置位置についてもサイドライン上ではなくコートの外側に設置しようと提案した。これは,ポストの外側を通って相手コートに入っていくシャトルの通過を防ごうとするためのもであったと思われる。このような配慮をシェークスピア少将がしたのは,アワーグラス型コートではポストの外側を通過するシャトルをフォルトとしているが,その判定が難しくトラブルが頻発した。そこで,コートの外側にポストを設置しネットを張れば,そんなトラブルも起こらないだろうと考えてのことであると思われる。
 
 実は,この提案は,今回の総会の前年,すなわち,1900年4月に行われた定期総会の際にもシェークスピア少将から出された。しかし,そのときは,長方形のコートで試合をやったらどのようなゲームになるのか、想像がつかないという意見が出された。そりゃそうだろう、私たちに置き換えてみれば、来年からアワーグラスのコートで公式試合をやりましょうと言われるようなものである。どんな試合内容になるか想像もつかない。
 そんな意見が多数を占め、多数決をしたところ,シェークスピア少将の提案は小差で退けられた。しかし,アワーグラス型コートが不便であったことも事実で、1年間,試行期間を設け,色々なことを試してみて,来年,すなわち,1901年の総会で再び議論しようということになった。ちなみにそのときには,シェークスピア少将からではないがロングサービスラインの廃止も提案された。すなわち、ロングサービスラインをバックバウンダリーラインにしようという案である。

 1901年の総会において、結局,コートの形状については,多数決の結果,23対2で変更が可決された。みんなが試しにやってみて,長方形の方がやり易かったのであろう。

 また,シングルスコートについても新設されることになった。その寸法については,シェークスピア少将の原案を修正しながら現行の大きさに決まった。そのときに,ロングサービスラインについても検討されたが,バックバウンダリーラインをロングサービスラインにしようということになった。

 さらに,ポストの設置位置については,シェ−クスピア少将の提案を元に折衷案が取り入れられた。つまり,新ルールでは,ポストはサイドライン上でも,あるいは,2フィートを超えない範囲であればコートの外側でもよいということになった。これは,狭い建物でプレーをしているクラブに配慮したものであった。つまり,コートの幅は,これまでの砂時計型のコートも新しい長方形型のコートも20フィートであるが,クラブによってはこの幅ぎりぎりの狭い建物でバドミントンをやっているクラブもあるのである。そこで,ポストを設置する位置をコートの外側何フィートという風に決めてしまうと困るクラブもでてくるのである。そこでこの様に幅を持たせたのである。
 もちろん,サービス,プレーのいずれの時においても,シャトルがポストの外側を通過したとしてもフォルトではなくなった。

 一方,ダブルスのロングサービスラインについては廃止にならなかった。もしこのときに廃止されていたら,ダブルスの戦術も全く違ったものになっていたであろう。現在、ダブルスの基本サービスはショートサービスであるが、廃止になっていれば、基本はロングサービスとなっていたであろう。

 ダブルスでショートサーブが下手なために,試合で負けて泣いてばかりいる選手,いるでしょう。ラリーになれば負けないんだけれど、サーブが入らず、あるいは、甘い玉ばかりになって相手に決められ、得点に結びつかない選手、いるでしょう。あなた、これを読んでいるあなたもきっとそうでしょう。さて、このときに、もしもロングサービスラインが廃止されて、バックバウンダリーラインがロングサービスラインになっていたら、君は今,ダブルスの達人になっていたかもしれません。かくいう私も、ショートサービスが苦手で、何度も悔しい思いをしました。あなたの気持ちが、痛いほどよくわかります。
 
 歴史に,もし,はないが,このようなことを考えて、自分が勝てない、あるいは勝てなかったのをルールのせいにするのもおもしろい、とは思いませんか?
 
 ということで,最近なんだかとっても寒くなりました。美濃地方でも山間部には雪が降っているようです。ということは、スキーシーズン到来ということか。また、楽しみが増えました。それでは皆さん、どうぞご自愛下さい。失礼いたします。

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